洋上発電、係留、メガフロートに関する基礎研究

村井基彦教授(環境情報研究院)

環境情報研究院の村井基彦教授研究室では、洋上風力発電、波力発電、係留、メガフロートなどの海洋開発技術に関わる基礎研究を行っています。

浮体式洋上風車の実現に向けて特に重要となるポイントは、建設や設置コストが低く抑えられることと、高い発電効率を維持するために波浪や風による動揺量が小さい構造であることです。そこで、可能な限りシンプルな構造で、かつ複数脚による干渉影響及び波無形状により特定の周期の海域における動揺の低減効果を狙ったセミサブ型モデルを設計しました。設計した5MW風車の1/100模型を用いて、風・波浪場での6自由度運動特性を水槽試験により確認しました。

SPAR型浮体式垂直軸型風車は、主要機器を搭載するナセルを下方に設置でき、波浪による浮体構造物の動揺に対してナセル内でのメンテナンス作業時の安全性を高く保つことが出来ます。また、風車の大部分の重量を占めるナセルが下方に設置できるため、風車系の重心が低くなり小型化が容易になり、経済性の向上が図れます。このシステムの波浪中動揺の解析と安全性・経済性に関して検討を行いました。

波力発電には浮体と波の相対変位からエネルギーを取り出す方式と、浮体運動からエネルギーを取り出す方式があります。後者がよりエネルギー効率が良いと期待されるため、浮体を動揺させ波エネルギーを取り出す研究を行いました。

浮体式海洋構造物を海面に保持するには係留索により海底と繋がれた係留浮体が必要です。係留浮体に関する多くの研究は、浮体に働く流体力を簡単化、もしくは係留索を近似的に扱うため、問題がありました。浮体運動は流体力を線形ポテンシャル理論に基づく3次元境界要素法で求め、係留索の挙動は非線形影響を考慮できるLumped-Mass法で計算を行い、精度の高い解析を行うことが出来ました。

3次元境界要素法とLumped-Mass法による係留浮体運動解析

係留システムには様々な形式があり、使用するラインによって異なる係留特性を持ちます。係留システムを設計する際は、非常に多くの組み合わせの中から必要な性能を満たすものを選択する必要があります。チェーン重量・アンカー点距離・ライン緊張度の3つの設計変数に対して係留特性に与える影響を具体的な数値として求める技術を開発しました。

メガフロートとは超巨大な人工島で、薄い板のように縦横の長さに対し高さが小さい構造物です。羽田空港の滑走路としても工法の候補になりました。また、福島県の原発事故直後の放射能の汚染水の貯水のために、他の場所で使われていた浮体をすぐに持ってくることで対応した例もあります。メガフロートは固い構造物でありますが、波浪の影響で波打つような弾性応答が現れます。その応答を小型水槽を用いた実験や、数値計算により求めています。

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75の直方体浮体からなる浮体形状の最適化に関する数値計算

この他、村井研究室では、海底油田から石油を掘り石油をくみ上げる際に用いる柔らかいライザーパイプに関して、水域の中でどのような挙動が生じるかを実験、数値計算を合わせて研究しています。ライザーの実験では海上技術研究所の大水槽を用いることもあります。また、金沢八景の海の公園の、アサリ埋蔵量の調査を行っておりました。人が潮干狩りをすることによるアサリの個体数と大きさへの影響を調査し、年間変動予測を可能とするプログラムの開発を行っています。