横浜国立大学 常盤台自然共生キャンパス

横浜国立大学は、弘明寺地区、清水ヶ丘地区から1969年から1979年にかけて、ゴルフ場跡地であった現在の常盤台キャンパスに移転統合されました。移転整備にあたっては、学内で組織した設計委員会によって検討されたキャンパス・デザイン計画に基づき整備され、その考え方は「保土ヶ谷統合計画(1967-1980)」として取りまとめられました。その後、統合計画をもとに新しい考えを取り入れた「常盤台キャンパスマスタープラン 2016」を策定しています。常盤台キャンパスは現在、横浜市の風致地区に指定されています。最近では、都市科学部 環境リスク共生学科や YNU 里山 ESD BASE(教育学部 倉田薫子准教授代表)の有志の学生が中心となり、常盤台キャンパスの里山管理をしています。

常盤台キャンパスマスタープラン 2016 掲載場所(施設部ウェブサイト)

横浜国立大学常盤台キャンパス緑地管理と活用(環境省 30by30 ウェブサイト)

1968年以前のゴルフ場の航空写真(左)、1979年の移転完了時の航空写真(中央)、2010年の航空写真(右)

常盤台キャンパスは、1970年代に移転統合された新しいキャンパスで、その特徴の一つは豊かな緑です。移転にあたり、土地造成は最小限にとどめ、樹木群は出来るだけ残したうえで新たに植樹を行う計画としました。人間が緑と共生する環境保全林を作るため、”ふるさとの木によるふるさとの森づくり”「宮脇方式」の原則により苗木が植えられ、移転以前の樹木とあいまって現在の森を形成しています。

本学名誉教授・故 宮脇昭氏の言「どこの土地にも,本来そこに生えていた木(潜在自然植生)が必ず存在します。それを正しく判定できるよう、徹底的に実地調査を行いなさい。 本来の植生を考えないで作った”美しい森”は、いつまでも人間が面倒を見なければなりません。手入れを怠ると、本来の植生に戻ろうとする自然の力で荒廃してしまうからです。一方、本来その土地に植えていた木を再生した”本物の森”は、はじめの2〜3年は手入れをしてあげる必要がありますが、その後は自然の力だけで成長を続けるのです。」宮脇教授は,この原理に基づいて,全国で、さらに世界各地で森づくりに取組み、多くの成功を収めました。

上の航空写真を見ると分かるように、緑地面積は敷地面積全体の約44%を占めています。下のキャンパス地図の緑の部分の、Aの一部とCが移転前からの残存林です。この地図のA, Bが保全林、Cが里山、Dが並木、E, Fが草地を表しています。本学では大規模な植生調査が数回行われていて(藤間、原田、藤原 (2001) https://x.gd/e4gtF)、緑地には多くの希少植物が生き残っていることが分かっています。 

サガミランイノデシュンランユズリハセンリョウ
フユノハナワラビコマユミヤマウコギエビネヒトリシズカ
フタリシズカカマツカツリバナミズタマソウオカタツナミソウ
ギンランヒロハカワラサイコワレモコウコケリンドウカントウタンポポ
タシロランマツバランマヤラン
常盤台キャンパスに現存する希少植物(横浜国立大学エコキャンパス白書2009横浜国立大学エコキャンパス白書2023より)

中でも、右の写真のマヤランは絶滅危惧II類に指定されています。また、日本の在来種のタンポポである「カントウタンポポ」は外来種の「セイヨウタンポポ」に圧迫され、都市部では急激に減少しています。頭花を支える総苞が反り返らないのが特徴です。

また、常盤台キャンパスには次のような多くの鳥が見られます。

マヤラン
カントウタンポポ
アオジアオバズクアカハラウグイスエナガ
オナガカワラヒワキジバトキセキレイコゲラ
コジュケイシジュウカラシメショウビタキシロハラ
スズメツグミツツドリツバメドバト
トラツグミハクセキレイハシブトガラスハシボソガラスヒメアマツバメ
ヒヨドリフクロウホオジロホトトギスマヒワ
ムクドリメジロメボソムシクイモズヤマガラ
常盤台キャンパスで見られる鳥(横浜国立大学エコキャンパス白書2009横浜国立大学エコキャンパス白書2023より)

常盤台キャンパスでは、2020年からヤギを使って除草実験を進めていて、この取り組みは学生も参加しています(https://www.ynu.ac.jp/hus/cus2/25962/detail.html)。