自己治癒材料

中尾航 教授 工学研究院

研究室概要

当研究室では、化学反応を一つの機能として活用する先端複合材料に関する研究を実施しています。研究対象である先端複合材料は、生体の動的機能を模倣した新素材であり、50年後の社会を支える根幹材料となる潜在能力を有しています。その一例である自己治癒セラミックスは次世代航空機用材料として注目を集めています。

自己治癒材料とは

自己治癒材料とは、材料自身が損傷発生を感知し修復することができる新素材です。自己治癒性の多くは化学反応を発生することにより発現します。化学反応を生じることで機能を発現することは、生体の自己治癒機能と同様であり、生体の動的機能を模倣するというまさに次世代の新素材です。

自己治癒材料研究は、高分子材料、コーティング材料、複合材料、金属材料、セラミック材料、コンクリートと幅広い分野で先端研究・開発がなされています。その応用先も台所用品から宇宙構造物までの幅広い用途が挙げられます。

自己治癒材料の実例

反応物すべてを予め材料中に内包する自己治癒材料

ex) S.R White et al., Nature, 409, 794-797, (2001)

周辺環境の物質を活用する自己治癒材料

ex) K. Ando et al., Fatigue Fract. Eng. Mater. Struct. 27, 533–541, (2004)

必要な物質を周辺環境から収集する自己治癒材料

ex) H. Jonkers, Ecological Engineering. 36, 230–235, (2010)

材料の自己治癒性が生み出す新たな価値

長寿命化、メンテナンスフリー化

自己治癒性が有効である時間内は、特性の減衰が緩やかもしくはほぼ一定に保つことが可能であるため、部材の長寿命化やメンテナンスフリー化を実現する。

環境順応性(完全機能回復が可能な自己治癒材料のみ)

自己治癒が発現するごとに、不良個所がなくなっていくため、機能が向上する。=初期不良品でも使用を可能にする。

大学で新素材に携わるメリット

自己治癒材料を始めとするこれまでにない機能を有する新素材が実用化するためには、20年以上に渡る長期間の研究開発期間が必要です。このため、社会情勢の分析や国際連携など、様々な研究者や技術者との連携が要求されます。これらの経験を通じることで、横浜国立大学生の一つの特徴でもある「コミュニケーション能力」の習得を高次元なレベルで行うことができます。